「Ananta」にて成層圏へと飛翔し、「Lumen」にて天の河を体腔に取り入れたスピラクルが、今回はその幽体を通して、パラレルワールドへの扉を開きます。
A面「Evestrum」は、グラスハープと電子音の干渉によって緩やかに変化していく、薄膜のようにレイヤーされた持続音で構成されています。精妙な霊的存在が五感を持った身体に浸透し、感覚によって触知可能な存在に成っていく過程の音響レポートです。
B面「Exusiai」は、真っ暗闇の広大な地下室で録音された、チベタンホルンと鉄板の響きを元に構成されました。暖かく、しかし仄かなエネルギーが、無限の暗黒の広がりの中に波紋のように浸透して行く過程を、音響の塊として捕らえたものです。
「Evestrum」の素材は、1990年代後半に鹿児島で、4トラックのカセットレコーダーにて録音されました。2002年にリリースされた「Sympathetic Field」の収録曲「Flood」に、同時期に録音した素材が使用されています。
「Exusiai」の素材は、2004年にスイスで録音されました。2006年にリリースされた「The Epidemic Symphony No.9」には、同じ場所で録音された素材が多数使われています。
コンポジションは、2007年にリリースされた「Lumen」と同時期に作られました。
ハンドメイドのカバーアートは、逆説的に現された不可視の世界、つまり、見えないものによって充たされた物。
このタイトルが、私のスピラクルとしての最後のリリースになります。少なくとも永い休眠前の。
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